医薬の和文のpre-edit
新卒で製薬会社に入社して、初めて医薬文書を読んだときはちんぷんかんぷんでした。
何を言いたいのか全くわかりませんでした。
自分の知識が圧倒的に不足していたことが一番の原因だったと思いますが、数年読んでいるうちに医薬文書の書き方自体が非常にわかりにくいことがわかってきました。
つまり、話の流れの中に無関係な情報が突然入ってきたり、主語と述語のつながりが不明確であったり、緒言で掲げた研究の趣旨と結論が合致していないなどがわかりにくさの原因のようでした。
医薬文書を理解するには、主軸となっている論理の流れを見つけることが最も重要であり、そのためにはセンテンスを入れ替えたり、前後の文脈から推定して情報を補足したり、論理の流れから重要ではない副次的な情報を省いたり、そんな作業が必要であることに気づいたのでした。機械翻訳にかける前に行っている和文原稿のpre-editと同じ作業です。
人間読者にとってわかりにくい医薬文書は機械にもわかりにくい。
何度も登場している表です。
●「論理の流れを見つけること」が第1段階
●「センテンスを入れ替えたり、前後の文脈から推定して情報を補足したり、論理の流れから重要ではない副次的な情報を省いたり、そんな作業」が第2段階
ここまで出来たらメディカル英訳はできたも同然です。
第3段階はメディカル英訳の作業の中ではオマケのようなものです。
第1段階と第2段階をクリアするには相当な能動的努力と時間が必要です。だから、その辺の翻訳スクールで半年程度、週1回添削してもらう受動的授業では全く歯が立たないのは当然です。
わかりにくい医薬文書をそのまま英訳するから難しいのです。
和文原稿の情報から逸脱しない範囲でわかりやすく読み替えてから英訳すれば楽に英訳できるし、簡潔なわかりやすい英文になります。
わかりにくい医薬文書をがんばって英訳しても、複雑な構造の英文はクライアントからの評判が悪いケースが多いです。
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