和文原稿のpre-edit事例【事例21】
事例番号が前後していますので、ご注意ください。
【事例21】
pre-edit前の和文原稿 | DeepL英訳 |
用量及び曝露量が高いほど、HCV RNAのベースラインからの最大減少量の平均値は大きかった(図2.2.3-2)。ジェノタイプと曝露量の間及びHCV RNAの最大減少量到達時間と曝露量の間に明らかな傾向は認められなかった。HCV RNAのベースラインからの最大減少量の平均値(最大減少量到達時間の平均値)は、アスナプレビル10、50、200及び600 mg投与時でそれぞれ0.28(26.00時間)、0.64(21.60時間)、2.26(21.60時間)及び2.87(28.00時間)であった(表2.2.3-1)。最高血漿中濃度到達時間とHCV RNAの最大減少量到達時間の間には差がみられた。 |
The higher the dose and exposure, the greater the mean maximum decrease from baseline in HCV RNA (Figure 2.2.3-2). No clear trend was observed between genotype and exposure dose or between time to maximum reduction in HCV RNA and exposure dose; the mean maximum reduction in HCV RNA from baseline (mean time to maximum reduction) was 0.28 (26.00 hours), 0.28 (26.00 hours) and 0.28 (26.00 hours) at 10, 50, 200 and 600 mg asunaprevir, respectively. (26.00 hours), 0.64 (21.60 hours), 2.26 (21.60 hours), and 2.87 (28.00 hours) at 10, 50, 200, and 600 mg asunaprevir, respectively (Table 2.2.3-1). There was a difference between the time to reach maximum plasma concentration and the time to reach maximum reduction in HCV RNA. |
●ジェノタイプと曝露量の間及びHCV RNAの最大減少量到達時間と曝露量の間に明らかな傾向は認められなかった。
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「ジェノタイプと曝露量の間」及び「HCV RNAの最大減少量到達時間と曝露量の間」とあるけど、「~の間に傾向はなかった」では意味不明瞭で、英語が乗りません。「関連性」について述べていることは明らかなので、そのように修正します。
「曝露量」がexposure doseと間違って英訳されるので、「曝露量」を事前にexposureとしておきます。
pre-edit後の和文 | DeepL英訳 |
ジェノタイプとexposureの関連性及びHCV RNAの最大減少量到達時間とexposureの関連性に明らかな傾向は認められなかった。 | No clear trend was observed in the association between genotype and exposure or in the association between time to reach maximum reduction in HCV RNA and exposure. |
●HCV RNAのベースラインからの最大減少量の平均値(最大減少量到達時間の平均値)は、アスナプレビル10、50、200及び600 mg投与時でそれぞれ0.28(26.00時間)、0.64(21.60時間)、2.26(21.60時間)及び2.87(28.00時間)であった(表2.2.3-1)。
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pre-edit前のDeepL英訳は滅茶苦茶。
それはなぜかと言うと、「HCV RNAのベースラインからの最大減少量の平均値(最大減少量到達時間の平均値)は」で突然始まっており、この「最大減少量の平均値」がどのような条件下で求められたものなのか不明瞭であるためです。そこで、「アスナプレビル10、50、200及び600mg投与時に測定した」で始まるセンテンスに修正しました。その結果、DeepL英訳はだいぶ改善しました。
pre-edit後の和文 | DeepL英訳 |
アスナプレビル10、50、200及び600mg投与時に測定したHCV RNAのベースラインからの最大減少量の平均値(最大減少量到達時間の平均値)は、それぞれ0.28(26.00時間)、0.64(21.60時間)、2.26(21.60時間)及び2.87(28.00時間)であった(表2.2.3-1)。 | The mean maximum decrease from baseline in HCV RNA measured at 10, 50, 200, and 600 mg asunaprevir (mean time to reach maximum decrease) were 0.28 (26.00 hours), 0.64 (21.60 hours), 2.26 (21.60 hours) and 2.87 (28.00 hours) (Table 2.2.3-1). |
特に二つ目のように、和文の意味を踏まえたpre-editを行うだけでDeepL英訳は大幅に改善します。
メディカル英訳におけるpre-editの重要性を指摘している人はほとんどいないけど、pre-editなしのMT出力をpost-editだけで納品レベルに仕上げるのは不可能だ。post-editだけで納品していたら、医学翻訳業界はそのうち破綻するだろうな。だから、結局は和文原稿に戻って、pre-editと同様のことをしないといけなくなる。つまり、和文原稿と照合して訳しなおし。
そんな手間かけるんなら、pre-editしたほうが断然良い。pre-editした上でMTにかければ、英訳スピードは圧倒的にMTのほうが速いし、英訳の質もMTのほうが良いことがたくさんある。どうしてメディカル英訳におけるpre-editの重要性が強調されないのか不思議だ。
pre-editの重要性がスクールで強調されないかっていうと、pre-editできる教師がいないから。
— 二拠点生活@東京+(函館-札幌-福岡) (@yokenwokikouka) November 11, 2022
ま、ぶっちゃけそういうことでしょ。w
ならば、翻訳スクールに代わって、医学翻訳ブログでpre-editの事例をちょっとずつ紹介していきましょう。
しかも、無料で。
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