乳腺腺がんの原因の一つとして性ホルモンの分泌過剰に伴う乳腺の刺激が考えられるが,本例を含めいずれの動物においても内分泌器及び雌雄生殖器に性ホルモンに対する影響を示唆する肉眼的及び病理組織学的変化は認められず,200 mg/kgの他の例では乳腺の異常は認められなかった.
少し複雑ですが、メディカル英訳の第一段階である内容理解が必須です。
和文原稿のままMTに英訳させてみました。
One of the possible causes of mammary adenocarcinoma is stimulation of the mammary gland due to excessive secretion of sex hormones, but no gross or histopathological changes suggestive of effects on sex hormones were observed in the endocrine organs or male and female genital organs in any of the animals, including the present case, and no abnormalities of the mammary gland were observed in the other cases at 200 mg/kg.
悪くはないけど、イマイチです。
各部を調べていきます。
乳腺腺がんの原因の一つとして性ホルモンの分泌過剰に伴う乳腺の刺激が考えられるが,本例を含めいずれの動物においても内分泌器及び雌雄生殖器に性ホルモンに対する影響を示唆する肉眼的及び病理組織学的変化は認められず,200 mg/kgの他の例では乳腺の異常は認められなかった.
「乳腺腺がんの原因の一つとして性ホルモンの分泌過剰に伴う乳腺の刺激が考えられるが」は一般常識を記述している部分です。
この「が」は逆接というよりも「一般常識はさておいて今回の試験では~であった」という意味を含んだ「が」です。
乳腺腺がんの原因の一つとして性ホルモンの分泌過剰に伴う乳腺の刺激が考えられるが,本例を含めいずれの動物においても内分泌器及び雌雄生殖器に性ホルモンに対する影響を示唆する肉眼的及び病理組織学的変化は認められず,200 mg/kgの他の例では乳腺の異常は認められなかった.
「本例」というのは先行する部分に記載されている200mg/kg の雄1匹のことで、切迫屠殺され、剖検で乳腺腺癌が見つかった事例です。
下線部は、今回の試験では「乳腺腺癌は性ホルモンによる乳腺の刺激が原因で起こることがある」という一般常識を裏付けるような所見はなかったということを意味しています。
乳腺腺がんの原因の一つとして性ホルモンの分泌過剰に伴う乳腺の刺激が考えられるが,本例を含めいずれの動物においても内分泌器及び雌雄生殖器に性ホルモンに対する影響を示唆する肉眼的及び病理組織学的変化は認められず,200 mg/kgの他の例では乳腺の異常は認められなかった.
乳腺腺癌が見つかった雄1匹に投与された200mg/kgという用量に注目した記述です。特に病変が見つかった乳腺の状態に注目しています。
以上を考慮して、和文原稿をpre-editし、MTに英訳させてみました。
乳腺腺がんは性ホルモンの分泌過剰に伴う乳腺の刺激が原因の一つと考えられる。今回の試験では、この死亡動物を含めいずれの動物においても内分泌器及び雌雄生殖器に性ホルモンに対する影響を示唆する肉眼的及び病理組織学的変化は認められなかった。さらに、200 mg/kgが投与された他の動物に乳腺の異常は認められなかった.
pre-edit前よりもはるかに良い英訳になりました。
Mammary adenocarcinoma is thought to be caused in part by stimulation of the mammary gland associated with hypersecretion of sex hormones. In the present study, no gross or histopathological changes suggestive of effects on sex hormones were observed in the endocrine organs or female reproductive organs in any of the animals, including this deceased animal. Furthermore, no mammary gland abnormalities were observed in other animals receiving 200 mg/kg.
今や英文作成力はスピードはもちろんMTのほうが人間よりも優れています。
人間に残された作業は和文原稿をpre-editして、MTが機能しやすい和文にしてやることくらいかな。
どうして、いとも簡単に和文原稿をpre-editして、MTにほぼ納品可能なレベルの英訳を出力させることができるのかというと、実は想定される英訳を頭の中に思い浮かべて、MTがその英訳を出力できるように和文原稿を書き直しているだけなのです。和文と英文の両方がわかっていないと使えないテクニックです。
和文原稿に英語が乗りやすい状態になっていれば、MTは優れた英文にしてくれます。頭の中に思い浮かべた英訳を自分でタイピングするよりも、和文をpre-editしてMTに出力させたほうが圧倒的に速いし、勉強になることも多いです。
和文と英文をペアで大量におぼえることにより、メディカル英訳におけるpre-editのコツがわかるようになります。
こんなことを書くと、pre-editが特別な技能のように感じるかもしれませんが、メディカル英訳者はNMTが登場する前から和文原稿を頭の中で読み替えて(pre-editして)、読み替えた和文を元に英文をタイピングしていたのです。だから、pre-editしないでpost-editだけで訳文を納品レベルに仕上げるという概念はあり得ない。post-editするためにも必ずpre-editをしないわけにはいかないから。
MTが貢献したのはタイピングの労力を減らしたことくらいかな。
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