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2023年6月 9日 (金)

和文原稿のpre-edit事例

[和文原稿]

これに対し、DCV+ASV併用療法を受けたAI447017試験のnon-responderでは、AI447026試験計画時点で得られていたSVR12達成割合は90.9%11例中10例)であり、その正確な95%信頼区間(58.7%99.8%)の下限値から、DCV+ASV併用療法の有効性がTVR+pegIFNα/RBV併用療法より高いことが示唆された。

 

上記の和文をMTに英訳させます。

In contrast, the percentage of nonresponders in the AI447017 trial who received the DCV+ASV combination therapy achieved SVR12, which was 90.9% (10 of 11 patients) as of AI447026 trial planning, from the lower limit of the exact 95% confidence interval (58.7%-99.8%), The efficacy of DCV+ASV combination therapy was higher than that of TVR+pegIFNα/RBV combination therapy.

 

メコメコですね。

まー、和文原稿がすっきりしていないので仕方がありません。

 

「これに対し」とあるので、この和文の先行部分を考慮に入れないと解釈は難しい。

 

先行部分は以下の通りです。

国内では、TVR+pegIFNα/RBV 併用療法がHCV RNA 量高値のジェノタイプ1 のC 型慢性肝炎患者に対して承認されているが、IFN 治療のnon-responder における効果は十分ではない(SVR24 達成割合:34.4%)。

 

先行部分を考慮して、最初の和文を構造解析します。

TVR+pegIFNα/RBV 併用療法はIFN 治療のnon-responderに効果不十分であった(SVR24 達成割合:34.4%)。

一方、

AI447017試験のnon-responderをDCV+ASV併用療法で治療すると、SVR12達成割合が90.9%(11例中10例)と高く、DCV+ASV併用療法の有効性はTVR+pegIFNα/RBV併用療法より高いことが示唆された。

なお、これらの結果は今回の試験(AI447026試験)の計画時点に確認されていた。


(したがって、TVR+pegIFNα/RBV併用療法は患者の利益にならないので、今回の試験(AI447026試験)でTVR+pegIFNα/RBV併用療法を対照群に設定するのは倫理上問題だ)

 

以上を総合して、最初の和文原稿を以下のようにpre-editします。pre-editした部分が下線部です。

これに対し、AI447017試験のnon-respondersをDCV+ASV併用療法で治療したとき、SVR12達成した患者の割合は90.9%(11例中10例)で、その正確な95%信頼区間は58.7%~99.8%あることがAI447026試験の計画時点に確認されていた。この信頼区間の下限値から、DCV+ASV併用療法はTVR+pegIFNα/RBV併用療法より有効であることが示唆された。

 

MTに再度英訳させます。

In contrast, when nonresponders in AI447017 were treated with the DCV+ASV combination, the proportion of patients achieving SVR12 was 90.9% (10 of 11 patients), with an exact 95% confidence interval of 58.7% to 99.8%, which was confirmed at the time of planning for AI447026 The lower limit of this confidence interval was found to be 58.7% to 99.8%. The lower limit of this confidence interval suggested that the DCV+ASV combination was more effective than the TVR+pegIFNα/RBV combination.


なぜかダブりが出ます。若干post-editする必要がある部分がありますが、最初の英訳よりもはるかに良くなりました。

 

何度も言いますが、英文と和文は構造が全く違うのですから、和文をそのままMTに突っ込んで英文に変換させてもメコメコな(≒痛々しい)英文にしかなりません。仕上がりの英文をある程度想定しながら、英文が乗りやすいように和文をpre-editするのです。実際の英文作成については、英文作成力と英訳スピードはMTのほうが圧倒的に優れているので、MTを利用しない手はありません。

最近のMTには、和文のパターンを学習しているせいか、和文をある程度補正する能力があるようですが、メディカル英訳に必要なのは前後の情報を踏まえて和文を英文が乗りやすいように読み替えることです。従来のメディカル英訳者はこの読み替えにとても苦心し、読み替えた和文を英文にすることにも苦心してきました。上述したように、MTのおかげで「読み替えた和文を英文にする作業」はかなり楽になりました。残るは「和文を英文が乗りやすいように読み替えること」です。

メディカル英訳の肝はこの読み替えにあります。

和文原稿のpre-edit事例では生の医薬文書を題材にしています。実際に翻訳仕事として依頼される文書と同様の文書です。医学翻訳の学習用に整えられた少量の課題でいくら勉強してもこの読み替え技能は身に付きません。

 

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