和文原稿のpre-edit事例
[和文原稿]
アスナプレビル200mg 1日2回を併用投与すると、ジゴキシンのAUC(0-T)及びAUC(INF)の幾何平均値比がそれぞれ1.343及び1.288であったことから、臨床的に弱いP-gp阻害薬であると考えられた。
上記の和文原稿をDeepLに英訳させます。
When asunaprevir 200 mg twice daily was administered concomitantly, the geometric mean ratio of AUC(0-T) and AUC(INF) of digoxin were 1.343 and 1.288, respectively, suggesting that digoxin is a clinically weak P-gp inhibitor.
一見すると明瞭な和文のような気がしますが、意味がよくわかりません。なぜかというと医薬の和文によくある主語と述語・目的語が一致していないためです。
最初の部分「アスナプレビル200mg 1日2回を併用投与すると」については、アスナプレビルを何と併用投与したのか不明です。文意から判断してアスナプレビルはジゴキシンと併用投与したものと思われます。したがって、以下のように読み替えなければなりません。
「アスナプレビル200mg 1日2回をジゴキシンと併用投与すると」
次の部分「ジゴキシンのAUC(0-T)及びAUC(INF)の幾何平均値比がそれぞれ1.343及び1.288であった」。この部分は以下のように読み替えられます。
「アスナプレビルと比較したジゴキシンのAUC(0-T)及びAUC(INF)の幾何平均比はそれぞれ1.343及び1.288であった」
最後の部分「臨床的に弱いP-gp阻害薬であると考えられた」。アスナプレビルがP-gp阻害薬であることから、ジゴキシンのAUC(0-T)及びAUC(INF)が高値になったのですから、臨床的に弱いP-gp阻害薬はジゴキシンではなく、アスナプレビルです。したがって、以下のように読み替えられます。
「アスナプレビルは臨床的に弱いP-gp阻害薬であると考えられた」
したがって、文章全体は以下のように読み替えられます。
「アスナプレビル200mg 1日2回をジゴキシンと併用投与したとき、アスナプレビルと比較したジゴキシンのAUC(0-T)及びAUC(INF)の幾何平均比はそれぞれ1.343及び1.288であったことから、アスナプレビルは臨床的に弱いP-gp阻害薬であると考えられた。」
上記の読み替えた、すなわちpre-editした和文を再びDeepLに英訳させます。
When asunaprevir 200 mg twice daily was administered in combination with digoxin, the geometric mean ratio of AUC(0-T) and AUC(INF) of digoxin compared to asunaprevir was 1.343 and 1.288, respectively, suggesting that asunaprevir is a clinically weak P-gp inhibitor .
ナイスな英訳になりました。
医薬の和文は、主語と述語・目的語が一致しない、論理の展開に不具合があるなどの理由で、そのままMTにかけてもうまく英訳されません。だから、メディカル英訳の極意に示すように、MTがいくら進歩しても読み替え(pre-edit)しなければならないのです。
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